夕暮れに 寄り添い並ぶ 影法師

緋の傾きに 託す重なり











気がつくと何時も傍らにいた。
なぜかは知らないし、知らなくていいと思う。
多分、答えを知るのが怖いのだろう。
随分と臆病になったものだ。
なぜなら、きっと私の望む答えは返って来ないから。
この想いはあの子の心には届かない。
あの子の想いはこの想いに重ならない。
それでも、一歩踏み出す勇気の証に。
夕日で出来た二人の影が重なるよう、
少しだけ近寄った。








この鬼は、嘗ての人間と鬼との関係を望んでいるのだ。
程よく仲良く、それでいて鬼は人間の恐怖の対象。
たまに真剣勝負などをする。
負けると攫われる。
そんな、人間と鬼との関係。
だから私が好きだと言ったとしても、
伝わらない。
鬼の想いとは重ならない。
嫌われてはいないと思う。
しかし、それ以上の感情的概念的感覚はこの鬼に無いのだろう。
本当は言ってしまいたい。
何も変わらない事は分かっていても。
どうしたら、伝わり、重なるのだろう。
人間の想いが鬼に。
それこそ真剣勝負なのだ。
・・・・・。
そして私はある疑問に至る。








もし人間が真剣勝負に勝ったなら、どうなるのか。








「人間と鬼が勝負して人間が負けると攫われるというけれど、勝ったらどうなるのよ?」
私は夕日を見ながら鬼に聞く。
「んー、私達鬼は大概万能だから、願い事の一つも叶えてあげるよ。真剣勝負のご褒美として。」
鬼も夕日を見ながら答える。
「何でも?」
私は夕日を見ながら鬼に聞く。
「私に出来る事ならね。」
鬼も夕日を見ながら答える。









「うーんどうだろー。前にも言ったけど人間にとって鬼は恐怖の象徴なんだよね。 攫われるのって大概怖いでしょ。相手鬼だし。
だから勝負した相手が最も恐れる事をするよ。ひひひ、霊夢は何が怖いのかなー?」
この鬼に想いを伝える事ができるかもしれない手段が解った。
鬼のルールに則れば良いのだ。
しかし、私はこの鬼が好きなのだ。
負けた時、私が最も恐れる事が起こる。



それはこの鬼が私の前から居なくなる可能性を示唆していた。








この鬼にもっと近づくには。
この鬼を抱きしめるには。
この鬼の想いに重ねるには。
この方法しかない。
だから勇気を出した。
「そうね勝負しましょうか。」
私は微笑とも泣き顔ともとれない複雑な表情で鬼に返事する。
「よく言った!さあ勝負だ!!」
鬼は私の答えを聞くや否や縁側から飛び降りて距離を取り構える。
フルフルと首を振る私。
負ける気なんて無いけれど。
私は保険をかける事にした。









「ねえ、萃香。お酒好き?」
縁側から降りて一歩近づく。
「うん、大好き。」
怪訝そうに答える鬼。
「ねえ、萃香。人が大勢萃まるのは好き?」
また一歩。
「うん、大好き。」
だんだんと鬼の表情が和らぐ。
「ねえ、萃香。人間との真剣勝負は好き?」
また一歩。
「うん!大好き!!」
嬉しそうに答える鬼。
「じゃあ、それを一度にしましょう。」
また一歩。
「へ?」
呆気に取られる鬼。
「お祭りをしましょう。お酒を飲んで、みんなで騒いで、最後に真剣勝負。楽しい事ばかりよ。」
また一歩。
「うん!!!!」
本当に嬉しそうに鬼は笑う。

例え最後になったとしても。

せめて二人に楽しい思い出を。

そんな保険を私はかけた。








いつもより近い距離。
手を伸ばさずとも触れられる距離。
吐息が微かに聞ける距離。
でも今は、これ以上進まない。
全ては祭りの日に。
だから、夕日に伸びる影だけが重なるように。
私の想いをそこで止めた。
いつもよりほんの少しだけ頬を赤らめて。

















そして歌は紡ぎ出す。
それは甘くて切ない百合物語。


















「今日の祭りは、貴方のために霊夢がやった事だけは忘れないであげてね。」







どこからともなく笑い声。
石畳の上に茣蓙を引き。
飲めや歌えの大騒ぎ。
祭り堤燈の明かりの下で。
見知った顔が笑っている。
大好きな鬼も笑ってる。
宴もたけなわ日付の変わるその前に。
そっと連れ出す祭の夜。
誰も見てない空の上。



二つの影が走り出す。








ふと思う。
霊夢は一体何が欲しいのだろうか。
霊夢は一体何をして欲しいのだろうか。








降伏勧告なんて、駄目だよ霊夢。
これは真剣勝負なのだから。
多分私は負ける。
でも、楽しくて仕方ない。
だから全力を出して負ける。
直撃したらいくらなんでもただでは済むまい。
でも、楽しくて仕方ない。








でも、結果は違った。








「なにが?」
その一言で怒りは消えて。
「なにがじゃないよ・・・。なんで手加減したんだよ!!!!!!!
真剣勝負なんだよ、やめてよ、裏切らないでよ、霊夢。
もう人間に嘘を吐かれるのは嫌なんだよ。霊夢とならきっと昔のように人間と付き合えると思ったのに。
私、負けても良かったんだよ。勝っても負けても楽しかったんだよ・・・。
でも、あんなのは酷すぎるよ!!!!!!!!!!!どうして!!!!!!!」
悲しみと絶望が私を支配する。








「ごめんなさい。」
「違うよ、謝って欲しいんじゃないよ、どうして霊夢は解ってくれないんだよ!!!!!」
激昂する私。
ため息をつく霊夢。


「解ってくれないのは貴方の方でしょう!!!!!!!!!!!!!!!!!」








そして霊夢は消えてしまった。








「私が祭りの時に言った事、覚えている?」
「今日の祭りは、私のために霊夢がやった事だけは忘れるな。でしょ。」
だから解らないんじゃないか。
あんなに私のためにしてくれた霊夢が、それをぶち壊しにする理由が。
「そ、ならいいわ。答えは自分で出しなさい。」








本当に解らないんだ。









「言わなくても伝わる想いもあるのだけれど、貴方にはその、はっきりと言わないと伝わらないのよ。
だから霊夢はそれをしようとしたの。以上。」








そうか。
それが霊夢の望み。
私に何かを伝える事が。
ご褒美。









「私達には私達の理があるように、人間には人間の理があるの。霊夢はいちいちお前の理に合わせて今日を用意した。
だから少しはお前も、人間の事を、霊夢の事を理解してあげなさい、良い?」








そうか。
解ってよと霊夢は言っていた。
私に何かを伝えて私がそれを理解する事が。
ご褒美。









「良くお話してないと誤解とかもね、あるかもしれないから、きちんと話を聞いてあげて、信じてあげて。
私はそれが出来なくて、大切な人を泣かせてしまったの。だから貴方はそんな悪い子にならないであげてね。」








そうか。
私も泣かせてしまった。
私に何かを伝えて私がそれを理解して私がそれを信じる事が。
ご褒美。









「いつも一緒にいたいし、一緒にお話したいし、一緒にご飯食べたいし、い、一緒に寝たいものなの。
その人の事ばかり考えて、おかしくなってしまうの。それが恋なのよ!!!」








そうか。
だから私は勝ったのか。
つまりは、私にそれを伝えて私がそれを理解して私がそれを信じる事が。
ご褒美。








「解ったよ、紫。」
「早く行ってあげなさい。そこが祭りの特等席よ。」

















祭りのフィナーレ。
鬼は人を攫いに。
人は鬼に攫われに。
特等席から見えるのはそれはそれは美しい弾幕花火。

















「さーらったー!!!!!!!!!!!!!!」



















「萃香、好きよ。」




「うん、知ってる。」














注意:この妄想絵本はエロ本です。 おしっこもでちゃいます。










注意:エロ本ですが百合物なのでちんこはでません。









近日発売