SIDE B
―アリスの幻影―


PROLOGUE

大切なものを無くしてしまったら、貴方はどうするだろうか?

ただ彼は、それほど強固でなかったというだけの話。
だが彼は、それほど無能でなかったというだけの話。
でも彼は、そこまで天才でなかったというだけの話。

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INTERLUDE 0

真紅のような真紅は嘗てのようにソファに座り紅茶を飲んでいた。
テレビは付けていなかった。好きだった番組はもうなかった。
時折、リビングを見渡して懐かしそうに、悲しそうに微笑んだ。
それらの姿に、彼は他の人形も再生出来ないかと考えた。
そして彼は、もう一体の彼と契約した人形を部屋に運び込んだ。
物言わぬ抜け殻の山がある部屋に。

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REBIRTH

奇跡に再現性は付随しない。

それは、嘗ての再延。
それは、嘗ての再演。
それは、嘗ての再縁。

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INTERLUDE 1

贖罪の証として、彼は真紅の見えない所で翠星石を犯し続けた。
トイレに連れ込んでは全身がどろどろになるまで犯した。
服を洗濯している間に全裸のありとあらゆる所を犯した。
風呂に入っている間に湯が濁った汚水になるまで犯した。
感謝の証として、翠星石は拒むことなく彼に犯され続けた。
いつも一緒だった片割れを思いながら。

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DOUBLE

私は壊れていた。
僕は壊れていた。

妹が壊れていた。
姉が壊れていた。

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INTERLUDE 2

翠星石の望みで彼は双子の片割れを再生した。
加虐思考の強い妹は姉を辱めては嬉々としていた。
変わり果てた出来損ないの姉が許せないのだと。
翠星石を犯し続けたために人形に対する欲求が増大した彼はその吐け口を求めた。
しかし、翠星石は蒼星石に独占されていたし、真紅には頼めなかった。
そこで彼は真紅の天敵を思い出す、あの黒い人形を。

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WHITE

FAIRNESS:肌の白
LIGHTNESS:明の白
INNOCENCE:罪の白

違います、白いドレスしか着れなかっただけなのです。

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INTERLUDE 3

記憶が空白ならば、過去の罪を漂白していいのだろうか。
水銀燈は、それを良しとしなかった。
彼の行為を自分への罰として全て受け入れた。何もかも。
その汚しても穢れない絶対的な白さに、彼は再び嘗ての再現を決意する。
例えそれがどんなに歪であろうと、受け入れるのだと。
そうしなければ、この白さに自分が毒されてしまうから。

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UTOPIA

何処かが違っていた。
何処かが壊れていた。
気づかない事にした。
違いは無い事にした。
記憶が違う事にした。

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INTERLUDE 4

彼は残り全ての人形を再生した。
嘗ての楽園はここに再生した。
それは壊れたローザミスティカの壊れた人形達の壊れた楽園だった。
ただ一体、それらとは違う紛い物の真紅として存在していた人形は、
本当に嬉しそうに、姉妹達の奇行を眺めていた。
破綻という甘美な飴玉をゆっくり溶かし味わうように。

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DECLINE

また、姉妹達と会えて嬉しかった。
また、此処で過ごせて楽しかった。
また、貴方を好きになれてかった。

だから、ありがとう、さようなら。

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INTERLUDE 5

一体、また一体と、元の抜け殻に戻っていく人形達。
あるものは彼に感謝し、あるものは彼を呪って。
全てのローザミスティカが消えたとき、最後の人形は真実を語る。
アリスが消えたその後を。
人形が再生したその訳を。
アリスを殺したその嘘を。

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EPILOGUE

アリスの幻影を忘却して、楽園を思い出し。
アリスの幻影を消費して、楽園を持続させ。
アリスの幻影を破壊して、楽園は完成した。

「そして幸せなあなたのお人形・・・。」